全国の誇り高き作り手をご紹介。風味豊かな万能だしをつくる「新丸正」

日本のうまいものセレクトショップ「久世福商店」
バイヤーが全国を巡り、そこで出会った誇り高き作り手たちと、うまいもの。私たちは作り手とお客様の懸け橋となり、皆様の食卓に“うまい”をお届けします。

今回は、「風味豊かな万能だし」等を作ってくださっている、静岡県焼津市の生産者　久野徳也さん（株式会社新丸正　代表取締役社長）　にお話をお聞きしました。

焼津の鰹節を世界へ

ーー新丸正様の歴史を教えてください。

うちは昭和10年創業。祖父の正作さんが始めました。戦争に行ってすぐに傷痍軍人として帰ってきたんですが、体が弱かったこともあって、重労働の鰹節の製造ではなく、機械化しやすい削り節の事業を始めたんです。焼津は古くから鰹節の町。戦時中であったので、祖父は何か社会の役に立ちたいと思ったようです。

ーー削り節屋さんからのスタートだったんですね。

はい、昭和40年代に現在の土地へ移転した際、鰹節工場と削り節工場を併設する体制を整えました。これにより、鰹節の製造から削り節の加工までを一貫して行える生産体制が確立され、今の事業スタイルに近づいていきます。現在も「だしに真面目に一貫生産」というコンセプトのもと、ものづくりを続けています。今年で90年になります。

——ご家族で90年、繋いでこられたのですね。

周りには何百年の歴史を持つ会社さんもいらっしゃいます。私たちはまだまだ新参者なんです。他の老舗さんに後れをを取らないよう、いろんなことをやっていこうという思いが、父が社長になった時に変更した社名の「新丸正」にも込められています。

ーー新丸正、どんな意味なんでしょうか？

祖父の名前は“正作（しょうさく）”。“正しく作る”です。地元では“丸正”と呼ばれていました。セリ場で魚を買うとき、箱に“〇正”の屋号の札を貼っていたんですよ。それで普通だったら株式会社丸正になると思うんですけど、“新しいことに挑戦する会社でありたい”という想いから、“新”を加えました。社名も未来を見据えたものにしたかったんです。

ーー実際に現在、だしパック等で世界にも進出されていますね。

お客さまのおかげで、感謝しています。鰹節の下請けから、だしパック・粉末・液体など鰹節の総合会社のように事業を広げていく中で、「鰹節のプロ集団でありたい」という考え方に変わってきたように思います。社員は鰹節のプロフェッショナルであってほしいです。私自身も、いかにして日本の、世界の皆さんに鰹節を召し上がっていただけるか、楽しんでいただけるか、 認知していただけるかをいつも考えています。

家族の食卓で育んだ事業

——家族3代で作り上げてきた事業ですね。ご家族の歴史も教えてください。

私は年中さん、5歳の頃から祖父母と同居していて、いつも食卓には祖父のお客さんがいました。鰹節の商品がどうやって作られるのか、どんな味がするのか、家族や取引先の皆さんと話し合いながら決めていく姿を見て、“商売ってこういうものなんだ”と感じていました。人付き合いやコミュニケーションも学ばせてもらいました。

——にぎやかな食卓ですね。

そうですね。振り返ると11人家族で祖母も大きな役割を持っていました。祖父は体が思うように動かせなかった分、祖母が本当に働き者で。工場のやりくりや従業員の賄いまで、多くを担ってくれました。会社が続いてこられたのは、祖母の存在があったからこそだと思っています。

ーーおばあさまも一緒に商品開発をされていたんですか？

祖母が家で取っていた出汁を再現した商品は、今も私たちの大切な主力商品です。家族で食卓で、試作を食べたり、祖母の好きなお相撲さんの名前から商品名を考えようとしたり、思い出は数え切れません。

焼津の誇りを胸に、未来へつなぐ

——家族でつないでこられた事業、今後はどうなっていきますか？

私どもは、焼津の鰹節産業に携われていることを、心から光栄に思っています。焼津という土地の歴史にも深い敬意を持ってます。古代の神話に登場する「草薙の剣」で焼き払われた地として日本書紀に名を残す焼津。そんな由緒ある場所で、鰹節産業に向き合えることは、誇りであり、使命でもあると思います。

そんな中で、久世福商店さんと一緒に作った“風味豊かな万能だし”が、日本中、そして世界中の食卓に届いていることは、私どもにとって大きな喜びであり、励みになっています。だしパックでも、粉末だしでも、ポテトチップスでも、どんな形でもいい。鰹節を多くの方に楽しんでいただける商品を、これからも一生懸命つくっていきたいです。

おわりに

家族の思い出をにこにこしながらお話くださる久野さん。久野さんの語る物語は、家族のにぎやかな食卓の思い出と地域の誇り、そして未来への挑戦が詰まったものでした。

久世福商店バイヤーは、その商品のおいしさと、歴史に敬意を払いながら挑戦を続ける姿勢にほれ込みました。今では「風味豊かな万能だし」は長く多くのお客様に愛される久世福商店の看板商品に。久野さんは今も、だしを使った新しい商品を開発できないかと、楽しみながらアンテナを張り続けています。

会社紹介

■会社名　：株式会社新丸正
■本社　　：静岡県焼津市三和1384-1
■代表者　：久野徳也

▼新丸正と開発した商品（抜粋）はこちら