全国の誇り高き作り手をご紹介。素材の、うまみ引き立つ。毎日だしをつくる「中原水産」

日本のうまいものセレクトショップ「久世福商店」
バイヤーが全国を巡り、そこで出会った誇り高き作り手たちと、うまいもの。私たちは作り手とお客様の懸け橋となり、皆様の食卓に“うまい”をお届けします。

今回は、「素材の、うまみ引き立つ。毎日だし」等を作ってくださっている、鹿児島県枕崎市の生産者　中原晋司さん（中原水産株式会社　代表取締役）　にお話をお聞きしました。

魚屋から世界へ──三代続く挑戦と地元への誇り

──まずは、中原水産の歴史について教えてください。

創業は1948年。祖父の与市の代から始まり、父、そして私へと三代続いています。祖父は鮮魚店からスタートし、魚の節の製造へと事業を広げました。特に“さば節”に目をつけたのは祖父の直感でした。今は久世福商店の毎日だしにも使っているさば節ですが、当時枕崎で製造するのは珍しかったんです。周囲が反対しても自分の感性を信じて挑戦する人でした。

──お父様の代では、さらに事業が拡大したそうですね。

はい。父はとにかくフットワークが軽い人で、枕崎の魚を、全国に卸すだけでなく南アフリカまで乗り込んで漁船の餌として供給する事業を立ち上げました。むろあじをマグロ漁の天然餌に使うという発想で販路を広げていったんです。枕崎だけでは足りなくなって、世界中の魚を“宝探し”のように探して、世界中に供給していました。

──まさに“世界を相手にする”事業ですね。

そうですね。一方で国内では、トラック50台を毎日走らせて、枕崎の魚を全国に届けていた時期もあります。そんな父の背中を見て育ったので、私にとって”日本全国”や“世界”は遠いものではありませんでした。むしろ、世界中を相手にするのは楽しいことだと思っていました。

──その中で、家業を継ぐ決意をされたのは？

もともと継ぐ前提ではなく、東京でビジネスを学んでいました。でも、都会で学び、働く中で“田舎の豊かさ”に気づいたんです。並ばなくても温泉に入れるし、食べ物もおいしい。空も海も青い。それがあたりまえだと思っていたけれど、豊かで貴重なことだったんだと。それに気づけていたので、家の事業がピンチになったとき、今地元に帰らなきゃ一生後悔すると思いました。親や、祖父、実家の事業への感謝もあって、自分が受け継ぎたいと思ったんです。

だしで世界平和を目指す──“おだし教室”と文化の発信

──現在は“おだし教室”など、だし文化の発信にも力を入れていらっしゃいますね。

はい。これまでに40か国、3000人以上が枕崎に来てくれました。南米でラーメン店をやっている方が、何十万円かけて、ここを目的地に来てくれることもありました。だしを飲んだ瞬間、みんな嬉しそうな顔をするんですよ。あれが一番嬉しいですね。

──だしには、国境を越える力があると感じますか？

ありますね。魚が苦手な人でも、おだしが嫌いっていう人はほとんどいない。本能的に喜ばれるものなんです。だからこそ、世界中に伝えていきたい。“おだしまみれの世界”になったら、きっと世界は平和になると思っています。

枕崎から未来へ──産地発信の使命とゴール

──枕崎という土地の特性も、事業に影響していますか？

枕崎は日本の南の端、鉄道の終着駅でもあります。目的がここにないと来ない場所ですよね。でも、何かアクションを起こせば、反響が大きい。また、鹿児島の人はユニークで、地元に愛着を持っている方がとても多いですね。歴史的に外からの脅威が近づくことも多く、災害も多かったのが関係しているのか、結束力があります。私も逆境で燃えるタイプなので、捉え方によっては難しい状況が、地元の方と一緒に地域を盛り上げたいというエネルギーに変換されていると思います。

──今後について教えてください。

おだし文化をもっと広めていきたいです。父の代で行っていた製造は手放しましたが、開発と販売に特化した“ファブレス型”の事業体として、同じように地元に誇りを持っているパートナーと協業して枕崎の価値を高め合っています。誇りを持てる仕事をつくって、地元を元気にすること。それが私のゴールです。

おだしは、一番身近な食べ物でありながら、とても奥深い文化を持っています。海外にもだしがありますが、日本はだし文化を最も突き詰めていると思う。だしひとつが生活を豊かにする。そんなおだしの魅力を、枕崎から世界へ発信しつづけていくのは、ここで生まれた私たちの責任だと思っています。

おわりに

「世界中の皆様に向けて、毎日一人でもおだしのファンが増えていただけるよう、産地から活動を重ねていきたいです。」と真剣なまなざしで語ってくださる中原さん。

久世福商店バイヤーは、その商品のおいしさと、地元を愛しながら世界中に食文化や土地の良さを発信し続ける中原水産の皆さまに心を打たれました。今では「素材の、うまみ引き立つ。毎日だし」は多くのお客様にリピートされている久世福商店の大人気商品に。中原さんは今も、枕崎を想いながら世界におだしを発信し続けています。

会社紹介

■会社名　：中原水産株式会社
■本社　　：〒898-0014 鹿児島県枕崎市東本町74-1
■代表者　：中原 晋司

【画像提供：中原水産株式会社】

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